映画『この世界の片隅に』 ネタバレ感想

この世界の片隅に

この世界の片隅に【映画】
監督:片渕須直、原作:こうの史代、音楽:コトリンゴ、制作:MAPPA 声の出演:のん 細谷佳正 稲葉菜月 尾身美詞 小野大輔 潘めぐみ 岩井七世 / 澁谷天外 ほか。Blu-ray & DVD好評発売中! 劇場用長編アニメ「この世界の片隅に...

これも君の名は。と同じように随分乗り遅れなんですが、見てきました。

 

前評判を十分聞いた上だったので、間違いなく「ハズレ」な映画ではないことを確認してますし、実際素晴らしいすごい映画でした。

 

ちなみに最初いきなり始まるのでびっくりします。んでコトリンゴの「悲しくてやりきれない」は卑怯なほどいいです。私はここが一番の泣き所でした。

え、後半じゃないかって?実は後半はまったく泣きませんでした。

というか泣く映画ではないと私は思っています。むしろ泣くことで分かった気になるという危惧さえあるんじゃないかと思っています。

 

主人公のすずが幼い頃から始まり、最初の時間でどんどん成長してメインは結婚した後です。

すずは大人になってからも見た目も中身も成長してないんじゃないかと思うくらいの描写です。正直稚すぎます。

それと眼の描写が時々線になるんですが、私はああいうここはおどけてますよ的なことを眼の描写を変更することで表すのは好きではないです。まぁそこが可愛いんですけど。

キスシーンが2回ほど(3回?)あるんですが、あまりにも幼いのでいけないものを見ているような気分になります。

この物語はとにかくすずとその世界が実在したものであることを徹底的に描写します。

細かい動きのアニメーション描写や膨大な取材からの情報のボリューム、背景描写などなどです。

もちろん実在の場所であるのですが、すずは架空の人物です。

その架空の人物をとにかく本当に戦時中に生活していたと思わせる描写が映画の半分だと思われます。

この映画が訴えていること、メッセージ性は表には一切でません。

あとなぜか最初の人さらいで出会ったのが旦那さんであることもずっと伏せられています。

人さらいが随分ファンタジーなのがちょっと謎ではありますね。

しかし、すずが唯一感情をむき出しにして泣く部分が、玉音放送を聞いたあとです。

いろんな辛い思いが実は無駄であったこと、という断言はできないですけど、反戦の思いがここに表現されています。

あぁ、やっぱりこれは戦争映画なんだと思いました。

晴美ちゃんが時限爆弾の犠牲になり、すずが右手を失うシーン、なんかエヴァを思い出してしまいましたが、あの表現は悲しくなりました。

正直に言うと、冷めました。

 

そうとういろんな配慮がありつつなのかなとも思いましたが、そうなると最後のある母親の死の表現はあまりに残酷です。原爆にたいする憎しみの塊のような表現でした。この落差はなんでしょうね?

それにすずの肉親、妹の表現はずいぶんさっぱりのような・・・

予算がなくて時間を30分削ったという情報がありましたが、ここらへんはなにかあるんでしょうか?原作では遊郭の女性と周作が、とかありましたがそこの部分なのでしょうか。

 

後半どんどん戦争が生活を蝕んでいくのですが、その割に人間はとても健康そうです。もちろんここでやつれさせたら悲惨という文字で物語が埋められてしまうのでできなかったとは思います。

が、あまりにも描写がすずの実在性に表現の重きを置いているので、戦争を知らない私達が戦争を分かった気になってしまう可能性がとても怖いです。

映画が終わった後の最初の印象が「悲しくてやりきれない」の、「やりきれない」気持ちが強く残りました。

 

この映画が素晴らしいという気持ちと、安易に感動する怖さというのが両方共存してて、結局は他の戦争映画を見たときと同じ虚しさが残ったんです。

正直いま戦争(太平洋戦争)はもう忘れたほうがいい存在だと思ってます。

いやいやそんなことはない、戦争を忘れてまた悲劇を繰り返してはいけない。啓蒙活動もやるべき、という考えであることを否定はしないのですが、自分自身はいやなんです。

君の名は。みたいに無条件に楽しい映画のようなオススメはできないなぁと思っています。

とにかく映画そのものは素晴らしいし、声優のんの演技がまたすずを実在の人物であり、この映画が史実のように感じてしまうほど素晴らしいんです。

 

素晴らしいすごい映画でした。戦争映画じゃなければいいのに

 

 

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